
エレベーターの保守点検業務委託契約について
国内のホームエレベーターを除く、不特定多数が使用するほぼ100%に近いエレベーターは、数あるエレベーター保守点検会社と保守契約を締結し、日常の通常使用でもし不具合、トラブルがあれば24時間で緊急コールセンターに連絡すると、通常30分から1時間以内で現場に急行対応、即復旧作業実施し、その性能の維持保全のため定期的に専門技術員を派遣して機器全体的についての点検作業を委託されています。
また、所有者管理者に義務付けられている定期検査報告についても年に1回、昇降機検査資格保持者が国の規定に沿った項目で各機器の状態を計測チェックし報告書を作成し管轄行政へ申請手続きを行い、契約先である所有者、管理者へ報告する事になっていて、保守契約内容に含まれています。
この、所有者、管理者の義務であり責任であるエレベーター保守管理について改めて見つめ直して皆さんのエレベーター管理に一度当てはめてみていただければと思います。
エレベーター保守点検について
皆さんのエレベーター保守点検の定期点検の頻度はどれくらいでしょうか?
毎月1回、2か月に1回、3か月に1回と大体、3パターンの内のどれかだと思われます。この点検頻度については、保守点検業者と打合せによって機器の状態、利用環境と保守点検費用のよって選択する事ができます。30、40年以前であれば毎月1回が多かったのですが、最近は機器性能の向上と24時間の各拠点の
緊急体制の充実、遠隔装置など普及により3か月に1回の点検頻度が非常に多くなってきています。
リニューアル工事前は毎月1回だったが、リニューアル工事後に3か月に1回で遠隔装置付きの契約変更にして月額ランニングコストを削減するケースも多いので参考にしてください。
あと、現在の契約が消耗部品の取替も含むフルメンテナンス契約か、部品取替えも含まないPOG契約かも変更契約に関しての判断材料として重要です。
まず、現場担当の保守点検員について、毎回同じ作業員で、作業完了の報告は的確で分かりやすい内容で説明を受けていらっしゃるでしょうか?
保守点検業務は技術的要素が強い作業ですが、サービス業に近い分類と感じています。
特に、現地に管理されている方とのコミュニケーションは非常に大切で事前の点検日時連絡、貼り紙掲示は十分な告知期間を持たせているか、きちんと時間通りの予告時間通りの作業時間であったかとか、完了の報告は的確で分かり易い内容か、作業内容について細かく丁寧な説明だったか・・・そもそも、作業開始の挨拶や作業中の住民様とのすれ違いでも愛想よく、“こんにちは“の一言があるのとないのとは印象が全く違ってくるものです。
残念な保守会社の例では、点検連絡、貼り紙もなくいきなり来てエレベーター停止し、作業に入ってしまったり、予定していた点検日時に当日キャンセルの連絡あり、別日に設定してほしいとのやりとりが頻繁にあるとか、完了時の報告も点検報告書を渡されるだけで説明もなく、しかも作業時間も15分程度?・・・これでは不信感をいだいてしまうのは当然の事だと思います。
エレベーターの機械の事は専門的分野なので業者に任せるしかありませんが、皆さんがエレベーター周辺の目に見える範囲でも、確認できる事が3つあります。
- エレベーター室内天井照明のカバー内に蓄積された埃、虫の死骸除去
- エレベーター扉に防犯ガラス窓が付いている場合、窓の縁に付着した埃の除去
- 点検作業告知貼り紙をエレベーター内、1階乗場に掲示している場合、付着用テープの剥がし残しのチェック
以上3点については機器性能上ではなく、見た目美観に関する事ですが清掃業務についても作業内容の一貫として、さらにサービス業としての顧客満足向上にどれだけ向き合っているか・・・一度試されてみては思います。
あと、出来る範囲、頻度で構わないのですが、エレベーター機械室(ある場合)を覗かれる事もお勧めします。きっちりした単棟技術員のエレベーター機械室は必ず、整理整頓ができていて、きれいに掃除もされています。普段は誰も立ち入らないところでも、実際の作業効率、トラブルを想定した場合の環境を考えると必然な事なのかもしれません。
因みにエレベーターの機械室内にはエレベーターに関する以外の物を置く事は定期検査上でも指摘項目となるので、合わせて現場確認してみて下さい。
保守点検報告書について
保守点検作業完了報告時に必ず、当日の作業員から発行される報告書です。
点検作業時に管理者の方が不在の場合は、後日郵送されるはずなので必ず区分け、日付順に整理して保管するようにしましょう。
書式・様式は、保守会社によって様々ですが、どの保守会社であれ内容はほぼ同じです。
記載内容は
・点検実施日
・作業報告者名
・点検項目
- 機械室環境
- 制御盤機器
- 電動機・巻上機・滑車(メインシーブ、セカンドシーブ)
- 調速機
- 油圧パワーユニット(油圧式エレベーターの場合)
- 油圧作動油(油圧エレベーターの場合)
- 圧力配管・高圧ゴムホース(油圧エレベーターの場合)
- かご上、昇降路、ピット環境
- 各リミットスイッチ
- ガイドレール
- 主ロープ、調速機ロープ、チェーン(ある場合)
- 移動ケーブル
- 釣合い重り
- 調速機、テンションプーリー
- 昇降路内制御盤機器(マシンルームレス型の場合)
- 昇降路内電動機、巻上機、綱車(マシンルームレス型の場合)
- プランジャー、シリンダー、綱車(油圧式の場合)
- 圧力配管
- ドアマシン関係
- かご内操作盤、表示器
- かご内装、照明、停電灯、ファン
- かご扉関係
- ガイドシュー、ガイドローラー
- 着床装置
- 外部への連絡装置
- 乗場扉関係
- 呼び釦、表示器
- ドアインターロック、スイッチ
- 遠隔監視装置、自動通話装置
- 地震、火災、停電管制装置
点検項目ごとに、チェック欄が設けられていて、
✓ 異常が認められないもの
× 修理を要するもの
△ 注意を要するもの
〇 部品交換、調整、清掃、注油したもの
/ 点検外項目
それぞれに状態の表記がされています。説明なしでただ手渡しされただけで機器の状態の内容が理解できるでしょうか?
どういった内容の項目なのか?×の修理とはどんな状態で緊急を要するのか?その費用は?△の注意を要するとはどういう事か?今後故障する可能性が高いのか?緊急性が高いのか?どんな症状になるのか?・・・
いかがでしょうか?報告書中身をあまり気にしないで事務的に報告書に署名を求められ、そのまま何か月も経過し、故障発生してから慌てて保守会社に問い合わせても、その時点からの修理判断、復旧依頼、見積検討となって突発的な支出となってしまいます。
保全に積極的、真面目に取り組む姿勢の保守会社は、そのチェック欄の印ごとに備考欄、連絡事項欄にその内容の記載があり、点検完了時にその説明とその修理見積書、提案書についての案内があります。
金額が大きかったり、複雑で多岐にわたる見積内容の場合は営業担当からタイムリーに説明訪問が別途あるので、じっくり内容を理解し計画、判断していきましょう。
今、部品の生産調達流通の遅延が深刻で見積がタイムリーにでない状況が続いています。尚且つ、発注から納品まで1年近くかかる部品も数多くなりより以上、早期計画の必要性が高まっていますので、技術担当と営業担当との意思疎通、連携についても格差が大きくなっています。
建物竣工して以来、エレベーター保守解約はずっと同じ会社といったケースが多いので、あまり気にされた事がないのではと思いますが、このブログをきっかけに現状把握に努めてみてはいかがでしょうか・・・?
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