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エレベーターリニューアル工事で既存不適格についての検討

2025年10月26日

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既存不適格とは?

エレベーターリニューアル工事の見積検討していく際に、必ず目に、耳にする単語、専門用語に“既存不適格“という言葉があります。

特にメーカー系保守会社の見積提案書、見積書にも関連した説明、注釈等記載されているケースが多いのですが、何となくエレベーターの法律に関する事なんだなと最初の頃はイメージされると思います。

しかしながら後々、見積検討が進むにつれて仕様、金額面で大きな差額、インパクトがあるので明確に理解をされる事をお薦めします。

既存不適格とは、皆さんが現在利用している、いわゆるすでに設置されているエレベーター(すでに利用している)の法適応について定められた内容の事になります。

エレベーターを含めて、国土交通省が管轄する建築業界は年度によって、新しい基準による法改正が為され、その基準、制度に則って現地エレベーターに対して製造、設置、保守、管理を履行しなくてはなりません。

当然、設置された当時の法律を準拠したエレベーターが建設、設置されていくので、設置後に建築基準法が改正されると新しい法規に適合しないことがあります。

その場合において、現在設置されているエレベーターは新たに定められた法令の規定が適応されないことが、定められています。

この事を、“既存不適格”といいます。

20年、30年前の建築基準法に基づいて設置されたエレベーターは現在新築で設置される最新型エレベーターの規定は適応されません。

従って、今現在も使用されているエレベーターは問題なく引き続き使用する事ができます。

但し、確認申請を伴う大幅な入替工事等の場合は現行法令に適合させることが求められます。

年に1度、定期検査報告をエレベーター保守会社が行っていますが、その報告書様式は現行法基準の内容になっているので、改正された項目については“要是正”欄に、〇表記されていて、その右横欄に“既存不適格”と〇表記されていますが、前述の内容から問題点の指摘、是正勧告等、違法性を表しているのではありません。

エレベーターリニューアル工事で主な既存不適格解消項目

  • 地震時管制運転、予備電源(停電自動着床装置)の設置

・地震時管制運転とは地震が発生した際に揺れを感知しエレベーターを最寄階で停止し戸開。かご内閉じ込めを防ぐための安全装置。

・停電時自動着床装置とは、雷・災害などで停電がおこる場合、エレベーターが途中階で停止、閉じ込めが発生してしまう事を防ぐため、停電が発生した場合に停電用のバッテリーにて、エレベーターを最寄階まで移動させ戸開停止させる装置です。

  • 戸開走行保護装置の設置

戸開走行保護装置とは、万が一ブレーキ故障等により、扉が開いた状態でかごが昇降しようとする場合に通常の回路とは別の回路を設けエレベーターを緊急停止させる装置です。

・運転制御プログラムから独立した戸開走行防止装置

・ブレーキの二重化

・非常停止時の移動距離の規定化

詳しくは過去のブログで紹介しているので参照ください。⇓

エレベーター事故防止と戸開走行保護装置について – ブログ | エレベーターマネージメント

  • 安全基準(耐震対策)の明確化

防災対策強化既設昇降機の設計荷重、耐震荷重の強度計算書に基づいて必要な補強対策、変更、構造の特定、明確化

詳しくは過去のブログで紹介しているので参照ください。⇓

エレベーターリニューアルの耐震対策工事 98,09,14について – ブログ | エレベーターマネージメント

既存不適格についての解釈、捉え方、考え方から合意形成を導く

管理組合の議事進行は基本的に理事長を中心にして、役員全員での合議制が基本です。

まず、最初の検討を始める段階で基本的知識、情報が全く無い状態でこの既存不適格について、どういった情報の伝わり方をするかによって、ずいぶん受け取り方が変わってくるものです。

一つの考え方としてですが、せっかく、大規模な改修更新工事を行うのだから、最新の安全基準の機能を備えた仕様とする事をお薦めします。国土交通省も事実、リニューアル工事にこういった既存不適格を解消する事を推奨していますし、そういった仕様にする事を条件に地方行政に補助金制度を設けています。

大きな事故が起こってから、大災害が発生してから、あの時にあの仕様にしておけばよかったと、契約してしまってからでは遅いので、メーカー系保守会社は一部の既存不適格解消の仕様を標準仕様としてリニューアルパッケージに組み入れてますし、私の過去の経験から、管理会社の担当者も解消パッケージを第一候補として仕様に含めるように提案されていました。

私も、予算の制約が許容できるなら、この3つの解消工事をする事を推奨しますが、むしろ、予算の制約の少ない管理組合なんて、ほぼ存在しないのが現実です。

傾向として、既存不適格の内容がはっきり把握できていない状態で、過去の事故や大災害からこういった安全装置を付ける事を、国も推奨しています・・・。といったフレーズから入ると、エレベーターは安全第一なんだし、もしもの事があってはならないので国も推奨してるくらいだから、周りのマンションもみんなやっているのだろう・・・。

何となくやらないと、不適格といった判定されるくらいなのだから、ゆくゆくは違反になってしまうのではないか?

・・・と検討する前から解消するべきものだとイメージが先行される方が多いように感じます。

そこで、現実派であるコスト重視の考え方や、そもそも工事自体を疑問視される方が理事メンバーに加わると意見がバラバラでお互い、意見を譲る事はありません。

やはり、丁寧に一つ一つの項目についてどういった仕様目的、内容とコストと周辺環境を照らし合わせながら説明を重ねていって初めて、一つの見解に辿り着きます。

メーカー系保守会社はほとんどが、この既存不適格を解消する提案を推奨しますが、独立系保守会社はこちらから仕様を提示しないと既存不適格を解消した工事の仕様での見積もりは提示してこない傾向があります。

地震管制運転と停電時自動着床装置については金額的にそれほど大きなインパクトはありませんが、戸開走行保護装置と耐震対策工事は会社によって差がまちまちですが、1台300~500万円の差額が発生してしまいますので、よくよく内容を吟味しての判断が必要です。

尚且つ、耐震対策工事で最新機基準の14耐震を仕様に含むとなると、独立系の保守会社は見積対応不可の回答をする会社がほとんどの状況となります。

エレベーターマネージメントの見解としては、地震管制運転と停電自動着床装置は付加する事を推奨します。金額としては1台40~60万くらいと見ていますので、コスパの面からお勧めしています。

戸開走行保護装置については予算状況、利用環境、資産価値として将来的な捉え方等、いろんな角度から検証しての提案とします。

耐震対策については、14耐震にして既存不適格を解消する事が優先順位上位なら、メーカー系保守一択になる事を踏まえての検討となります。

従って、複数社での検討とするなら09耐震にして耐震構造の明確化、基準、規格の証明等についてはメーカー系保守会社以外が対応する事はほぼ難しい(中には対応可能な独立系保守会社も存在します)といった説明過程を経てご理解をいただいた上で、コスト両面で検討する事を推奨しています。

安全性、資産価値向上を最優先するか、コストとのバランスを考えての検討とするかの方針を見出す事が第一

メーカー系、独立系問わずエレベーター保守会社は14耐震除いて、既存不適格に対応する見積仕様のラインナップはほぼ備えていますが、制度自体がいわゆる緩和措置のような意味合いが強いので、各会社、営業担当者によって説明する内容、仕方、伝えようとするニュアンスが微妙に違って聞こえたりします。大まかな内容そのものの、違いはないのですが、その会社の営業戦略もあったりするとその価格設定にも表れてきますし、理解が深まらず、混乱や、ブレた解釈となったりする事があるので、正確な情報を無理なく、理解・吸収した上で、協議検討する事が重要です。

ぜひ、この機会に専門家の適切なコンサルティングによるプレゼンテーションによる勉強会、説明会をご検討ください。

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