ブログ

リニューアル

エレベーターリニューアル 戸開走行保護装置の検討

2025年11月23日

2025 11 23

戸開走行保護装置の見積検討位置付け

新築で設置する際に法律で設置義務付けされている安全装置に、戸開走行保護装置(UCMP)があります。

20、30年以上経過したリニューアル工事を検討するエレベーターは当時ではそういった法律は無かったので、設置されていない為主要機器を一式交換するリニューアル工事のタイミングで、現行基準に則った安全性の高い安全装置を設置するように国交省は推奨しており、大手メーカーはこの戸開走行保護装置を制御リニューアル工事で巻上機を含む仕様の場合、標準仕様として見積項目に入っています。

しかしながら、独立系保守会社のリニューアル見積項目にはこの戸開走行保護装置は巻上機を含んだ内容でも、オプション仕様なのでこちらから、仕様のオーダーを出さない限り、戸開走行保護装置は見積仕様には含まれていません。

この戸開走行保護装置がオプションで含む、含まないで大きく見積金額に差が生じるので比較検討の際に注意が必要なのです。

メーカー系保守会社の考え方では、この戸開走行保護装置はリニューアル工事の時には設置するのが当たり前の認識なので、取り上げて見積説明をされていないように感じられます。

営業担当者による事が大きいとは思いますが、どちらにしてもいらないと言っても標準仕様なので外して減額する事もできないし、金額内訳表記もないので、顧客からするとメーカー系保守会社は必要以上な過剰な仕様だから、メーカ―系保守会社は高いイメージを持たれてしまうのではと思います。

独立系保守会社では、コストメリットを最大限にアピールしたいので、出来るだけオプション装備を少なくして、必要最低限の仕様でかつ、自社の制御盤と巻上機をセットで販売したいので、巻上機を含んだ仕様にはなっているが、メーカー系と違い、戸開走行保護装置は含んでいません。

見積比較で詳細な見積仕様をこちらから提示しないと各社、思い思いの自社に有利な見積仕様となる為、金額格差が大きくなって正確な比較検討ができないといったお話をよく聞きます。

この戸開走行保護装置を管理組合として付ける、付けないと付ける場合、メーカー系と独立系の中でも対象機種、設置年度、扉開閉装置仕様によって、数十万~数百万円の違いとなり、大きく比較検討に影響を与えるのでそういった、注意点を踏まえて今回の内容紹介といたします。

戸開走行保護装置の目的、役割

この法律が施行されたのが2009年なので、09指針ともよく呼ばれます。

戸開走行保護装置と合わせて、この当時の耐震基準である09耐震も施行されたので、近年ではエレベーターに関する法改正の最も大きな改正年度でした。

この法律の大きなきっかけは2006年に発生した東京でのエレベーター人身事故でした。

エレベーターが到着、扉が開いている状態で自転車ごと、エレベーターに乗り込もうとした時にエレベーターのかごが上昇してかごの床と出入口上部鴨居に挟まれてしまったとても痛ましい事故です。

刑事裁判で事故原因究明にはおよそ10年以上がかかりましたが、究明過程の中で、ブレーキ部と制御系に何らかの異常不具合があったのではないかと国交省が判断し、制定、施行されたと解釈しています。

このような異常事態とならない予防安全対策として巻上機のブレーキと制御盤の制御機器を2重化構造とし、かごの位置、扉の開閉状況、ブレーキの動作状況、ブレーキパッドとブレーキドラムのクリアランスによる摩耗状態等の情報から、異常走行検知した時点で即停止する装置になります。

国土交通省の認定基準を満たす必要があるので、膨大な製品の試験データ

や認定に係る届出、審査期間等から、開発コストはかなりのボリュームとなるので、それなりの原価となり見積金額に反映されています。

各メーカーのドアインタロック部   ↓

戸開走行保護装置の見積金額について

その認定には、製造設置の申請する会社ごとにエレベーターの仕様である、積載量、速度、扉の形式(2枚扉片開、中央開き、幅、高さ)とかごがフロアレベルに着床して、扉が開いている、開いていないを判断、認識させるドアインターロック形状に至るまでが認定の審査範囲となります。

こういった、認定基準に準拠した装置を対象となる現地エレベーターに問題なく設置できるのかを判断確認する為には、見積前の現場調査が必須になるのです。

現場調査なしで、戸開走行保護装置付きの見積を作成できるのは、メーカー系のみなので、独立系保守会社は必ず現場調査で扉関係を確認する必要があります。

戸開走行保護装置の認定基準を満たしているかの判断に、自社がどういった形状のドアインターロック形状で認定取得しているかが焦点になります。

各メーカーのそれぞれの機種ごとのインターロック形状全てを含んで認定を取得している会社、一部の形状で認定を取得している会社、自社製品によるインターロック形状で認定を取得している為、既設インターロックをすべて自社インターロックに取替る必要がある会社等、エレベーター保守会社によってそれぞれであり、それによってコスト、見積金額に大きな差が生まれます。

インターロック形状が認定範囲外で自社インターロック製品での戸開走行保護装置とする場合、インターロック部のみの交換では済まなく、ドア機構一式交換が必要な場合は、各階、かごのドア機構(ドアヘッダー)をすべて交換となり、扉パネルも付随して交換する必要が発生するとかなりのコストアップとなるので、戸開走行保護装置を得意とする会社、不得意とする会社はこういった要因から見積格差が発生してしまうのです。

戸開走行保護装置の設置検討にはぜひ専門家の意見を参考に

一つの安全にかかわる安全装置ですが、システム全体がエレベーター全体機器に亘って、周辺機器も一緒に交換しなければならない会社、そういった必要はなく、ほとんどが既設流用で設置できる会社、あるいは全く設置できない会社といろんな状況が想定されるので、同一仕様で一律いくらなのかが難しいのがエレベーターリニューアル工事の見積であり、特に戸開走行保護装置はその目的、必要性についてきちんと理解した上で必要/不必要の判断をした上で、各エレベーター会社の見積条件、内容をヒアリング、理解把握しなければなりません。

一つ一つの不明点、不透明な内容をクリアする事が確実なコストダウンと過不足のない安全性、利便性を兼ね備えたエレベーターリニューアルが実現可能となるのです。

問合せフォームはこちらからお願いします。