
フルメンテナンス、POG契約 リニューアルに向けての保全計画
設置メーカーから、部品供給終了の案内が公表されるのは終了時期まで、おおよそ向こう3~5年先を見込んだ期限を設定する場合が多いですが、その頃から、メーカー系保守会社とメンテナンス契約締結されていれば、ほどなく管理会社から打診連絡があります。独立系保守会社とメンテナンス契約締結されている場合は、少なくともそれよりも遅れて、同じように案内がなされますが、いずれにしてもこの部品供給終了時期をターニングポイントとして、エレベーターリニューアルを計画、実施しなくてはいけませんので、まずは、その申し出先のエレベーター保守会社から見積もりを取る事から始まるかと思います。
しかし、その前に所有者、管理者としてまず現状エレベーターの保全状況を確認する事をお薦めします。
現在締結の契約形態 フルメンテナンス契約とPOG契約によって考え方、進め方が違ってくるのでそれぞれにおいて参考にしてみてください。
フルメンテナンス契約で現在保守契約を締結されている場合
分譲マンションでは、このフルメンテナンス契約が多いと思われます。特に竣工以来、設置メーカー系保守会社で現在まで継続されてきている場合、20~25年経過して、”3~5年先には部品が無くなってしまうのでリニューアルしてください。部品が無くなってしまってから、もし故障が発生しても、復旧できない場合があるので今から検討して備えるようにしてください。”といった案内内容になります。
こちらからすると、部品が無くなって保守が継続できなくなるなんて想定外なので、急いで長期修繕計画を引っ張り出して何年後にいくらくらいで計画しているかを確認されるのですが、それと並行して、今までの20、25年間、どれだけの部品が交換されて、現在の部品劣化状況がどの程度で、その部品供給が終了する時期まで、どんな部品が交換時期にきていて、リニューアル工事実施されるまで、どこのどんな部品がこのフルメンテナンス契約範囲内で実施される予定なのか?を詳しく情報を整理して分かりやすい内容で提案してもらう事を推奨します。
まずは、保守会社に現在までこのフルメンテナンス契約での保全計画に則った部品交換、修繕履歴を提示してもらいましょう。
それぞれの交換周期、保全状況からどこのどんな部位の部品が交換されたのか?
今まで、フルメンテナンス契約での部品交換実施が現在までどの程度実施されたのかをベースに、これからリニューアル工事実施されるまでの期間向こう、3~5年先までの計画される部品はどこのどんな部品があるのか?を明確にした上で、リニューアル工事の仕様内容と先の保全計画部品は重複していないのか?あるいは保全計画部品がリニューアル工事に基本仕様に含まれている場合、時期が接近している場合は、保全計画部品を延命させる事は可能なのか?を検証確認される事をぜひ推奨します。
担当顧客のエレベーター保全管理をとリニューアル計画をきちんと把握している営業担当なら、そういった周辺資料の準備、説明もしっかりしてもらえると思いますので試してみてください。
POG契約で現在保守契約を締結されている場合
こちらは現在、劣化が予想想定される部品があればその都度、部品交換の提案が為されて、内容、時期、費用により発注、交換が実施されているのですが、こちらも今までの交換実施、発注履歴を保守会社に依頼してみましょう。但し、途中で保守会社が変更されている場合は、解約した保守会社にまで履歴を問い合わせても、受付けてくれませんので、やはり竣工以来の発注履歴、交換履歴を管理組合なり自社で保管しているのが、前提になります。
その上で、現在の保全状況によって以下の2つのパターンによって、進め方が違ってくるのでそれぞれ紹介していきます。
〇保守会社から部品交換提案があれば、その都度、検討し実施している。基本的に保守点検作業報告書には不備、指摘事項が記載されていない。
→まず、部品供給終了となる部品はどんな部品か?多いのは制御盤内の基板関係、電磁接触器、電動機、プリント板、半導体ユニット、油圧バルブ、油圧ポンプ、巻上機等になります。
その内、一番直近で交換が必要となる部品はどれなのか?その部品の耐用年数は何年で交換時期は供給終了の前後いつくらいなのか?を相談してみてください。
供給終了部品以外は、交換対応可能なので、今まで通り提案を受ける事で問題はないのですが、もう数年先にはどちらにしてもリニューアル工事を実施しなくてはならないなら、ひっくるめてリニューアルしてしまった方が結果安くなるといった考え方と、さらには現在の原材料物価高騰を考えると中途半端に先延ばしせずに、今のうちにリニューアルを決めてしまった方が、数年後に発注するより安く済むといった考え方があります。
私もどちらかというと、中途半端に延命しながら、しばらく細かい部品交換を実施するより、一式新規交換して安心して利用継続される方をお勧めします。
〇過去から提案を受けているが、予算や時期を見ていて実施に踏み切れていない。複数個所に不備指摘が保守点検作業報告書に記載されている。
→少額の部品交換でも検討中の状況なのに、部品が無くなるからさらに高額なリニューアル工事を必要に迫られる状況かと思われます。
どのくらいの期間が続いていたのかによりますが、たまたま故障が発生しなかった、保守担当の予防保全提案が余裕をもたせていたのか、いずれにしても、この状況は少なくても部品供給終了までには結論、判断しなくてはなりません。供給終了してもこの状況が延々続いてしまうと最悪、保守会社から保守契約継続を辞退されるケースもあります。
まずは、リニューアル見積の要請と合わせて、リニューアル工事仕様に含まれていないその他の劣化部品を含んだ見積もりを依頼します。
リニューアルの標準とする仕様以外の部品交換については、現在保守を請け負っている保守会社にしか把握できない内容なので、今後のリニューアル工事検討の基本仕様ベースとなります。
この場合は、供給期限を待つまでより、出来るだけ実施検討に向けて早期に進める事をお薦めします。
リニューアル工事標準仕様に含まれない保全部品について
エレベーター保守各社は部品供給終了の対応にターゲットを絞ってリニューアル製品を開発しているので、基板関係、モーター、巻上機、油圧関連機器について、制御盤一式、巻上機一式、油圧ユニット一式を基本仕様として標準仕様としています。
その他については、個々の現場状況に応じて追加でオプション扱いとしているのですが、多いのがドア関係部品になります。
現場環境、利用頻度によって見積もりに含む、含まれないとエレベーター会社の見方によって、別れてしまうのですが、以下が現保守会社に確認が必要な部品になります。
・ドアハンガーローラー
・ドアスイッチ
・ドアワイヤー
・ドアシュー
エレベーターの故障原因で最も多い部位がドア関連になります。(故障原因の7、8割)ドア関連部品については慎重に検討が必要となります。
ドア以外では、エレベーター昇降の乗り心地を左右するガイドシューも確認が必要です。個人的にはいずれにしてもリニューアル仕様に含むようにしています。
エレベーターリニューアルを検討開始される前からでも、専門家の意見を聞くことをお勧めします。
最近、ある賃貸マンションオーナー様から、今回のようなまだ部品供給終了案内は公表されていないが、先を見据えてアドバイスが欲しいといったご依頼を受けて顧問契約をいただきました。
年間契約となるのですが、所有者様、保守会社、アドバイザー3社が一体的に取り組み事より、より効率的、計画的にエレベーター保全管理が可能となるので、どうか皆様もまだ先の話だからといって、先延ばしにするより、まずは気軽にご相談ください。