
現地エレベーター企業視察レポート(中国杭州市の景況感について)
先日のシルバーウィークを利用して、中国杭州にあるエレベーターメーカー企業を見学する機会がありましたので、今回は私が見て、聞いて、体験して、感じた事を率直に紹介したいと思います。

杭州は上海と車で2時間くらいの距離で、上海都心部と比べて新興都市化が進んだ広大な地域に計画的にいくつもの大規模な団地住宅が都心部周辺に隣接して中心部には超高層ビル群がいくつも連なる世界有数のビジネス街といった印象を受けました。
毎日夜の20:30頃から約15~30分程度のビル群に向けて照射されるプロジェクトマッピングは圧巻です。

現在、中国は不動産不況が続いていると聞いてきたのですが、とてもそんなイメージ等沸かない煌びやかな情景でした。
今回、そんな高層ビル群の一角にある30階にオフィスを構えたエレベーター会社に訪問し、代表者の方はじめ、各部署の責任者の方、大勢のスタッフの方から多方面に及んだ説明を受ける事ができました。

こちらの中国での実績としては年間数千台の受注を数人の営業で構成されていて、細分化された組織構成であり、規律、礼儀正しい社員さんの対応や業務に対する責任感や動き方、周りに対する気配りなど、非常に生き生きとした表情で業務にとりくんでいる姿に、以前に持っていた中国に対するイメージは完全に払拭されました。
実は20年前にも中国上海を訪問していて、その時在職していたエレベーター会社の中国工場を日本の顧客を招待したのですが、周辺環境から、現地スタッフ、関係者や工場内設備、勤務状況に至るまで、やはり日本国内のエレベーター会社とは隔たりを感じたものでしたが、ある意味衝撃的でした。
むしろ、中国の国民性として外からの客人を持て成す気質、サービス精神は日本より強いのではないでしょうか。

現地エレベーター企業視察レポート(中国製エレベーターの現状)
エレベーター新設工事にせよ、リニューアル工事で顧客に商品であるエレベーター機器設備を営業販売する一般的な手法としては製品カタログや会社案内、提案資料、実績表を使用して見積書を提示、案内説明となりますが、こちらは見方を変えて、出来るだけエレベーターの実物を直接目で見て触って、体感した上で購入を検討してほしいというスタンスで、エレベーター実機をショウルームに複数台設置して、まるでそれは新車販売ディーラーショールームや展示会場のようなエレベーター専用ショールームを建造されていました。
エレベーターが10数台展示されており、昇降路内部の機器が視認できるように壁は、駅等でよく見るシースルーの展望用エレベーターのようにすべてガラス張りになっていて、乗り場で呼び釦を推すと起動し、乗り込むと昇降するので、工事契約、購入する機器ほぼすべてが見積検討段階で確認できるようになっていました。

顧客対象が建物所有者、デベロッパーがメインとなるのでかご内意匠面をかなり意識したデザインチックなカゴが目立っていましたが、スタンダードモデルも設置されていて、コストパーフォーマンス重視といった印象でした。コスパ重視といっても日本国内の6,9人乗りエレベーターのカゴ意匠はどのメーカーのものでも似たり寄ったりで、エレベーターリニューアル工事で唯一、顧客が自らの意思で選択できるのも壁表面上に張り付けるダイノックシートカラーだけなので特に違和感はありませんでした。
私は、このコンサルティング業務の本格稼働前に、実はかご内のダイノックシート意匠の提案もプロとして提案できるようにと思い、インテリアコーディネーターの資格を取得しました。建物外壁、内壁、床と各戸玄関扉デザインとカラーと調和させたエレベーターかご内意匠の提案を心がけてきましたが、まさにより具体的に踏み込んだ提案説明が可能となるコンセプトだと感じました。
特に着目してほしいのが、かご内四隅の先端部は□なので、かごパネルとのつなぎ目(目地)がどうしても露出してしまってどのエレベーターも同じようなかご室デザインとなっていますが、パネル3方を1枚で1台のカゴパネルとして加工、研磨され先端部が角端垂直にではなく、アーチ状の曲線になっている点に注目させられました。

背面パネル細部や、両側手摺にいたる彫刻加工仕上げにより、凹凸感を出したり、エレベーター付きのマンションを所有、管理してる顧客が、どういった見た目のリニューアル工事が可能で、完成後はどのようにエレベーターが仕上がるのかが、このショウルームを訪れる事により明確にイメージすることができると思われます。
展示しているエレベーターの制御盤についても、より身近に見学できるように昇降路外部にセットされていて、制御盤内部についても詳しく確認する事ができました。
これに関しては、中国国内法規と日本国内法規である建築基準法により、日本で必要とされる安全装置、制御装置、各種スイッチ類等が恐らく必要となるので追加となる事からサイズアップした制御盤になる可能性が高いと思われますが、メイン基板と非常用のバッテリー、電源装置等非常にシンプルな盤内レイアウト構成でした。

展示されているエレベーターはすべて、マシンルームレス型であり、巻上機は昇降路上部にレイアウトされているタイプであり、日本はじめ、他の国に対しても製造販売計画を検討している段階で、かなり以前から今の日本国内エレベーターリニューアル市場の事情に照準を当てて、研究開発を進めてきた思惑を感じ取ることができました。
エレベーターリニューアル工事の新たな選択肢となり得る可能性
設置から20年経過するとメーカーから部品供給終了の案内が所有者に届き、メーカー各社は互換性のない自社のリニューアル見積仕様で利益確保の販売価格構成を強めています。独立系保守会社もそれに追随して、リニューアル製品の開発を急いでいますが、工事要員不足により従来仕様のリニューアル工事のバックオーダーを抱えながら新たな機種対応にも、限界が見え始めています。
今回は、次々と高経年機種のエレベーターは保守部品が無くなり、安全性を確保するため、リニューアル工事実施の必要性が日に日に高まるにも関わらず、作業人員キャパシティ不足から、納期2,3年先といった矛盾に満ちた状況に輪をかけて、近年の物価高による大幅な見積価格上昇と所有者・消費者にとって非常に厳しい周辺環境に一石を投じる可能性を秘めた存在となりえる、明るい兆しを見出すことができた海外出張でした。



