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【相談事例】管理会社に印象操作されたエレベーターリニューアル工事

2024年4月6日

2024 04 06
黄色い2機のエレベーターが配置されているマンションのエレベーターホール

管理会社にとってのエレベーターリニューアル工事

大手管理会社の売り上げの約50~70%が大規模修繕工事を筆頭にその他の設備関係専門工事を元請け受注であり、本来の管理業務の比率よりも大きくなってきていると聞きます。

現場のフロント担当者は通常の管理業務に大規模修繕工事に加え給排水ポンプや立体駐車設備、エレベーターの改修工事を長期修繕計画通りに売り上げ予想を立て、受注目標を各個人に設定されるのでかなり肉体的にも精神的にもハードだと思います。

数年前まではエレベーターは建設業法許認可の問題や専門的要素が大きいので管理会社が元請けに入る事はほとんど無く、管理組合とエレベーター工事施工会社と直接契約する形態でしたが、営業戦略の転換で専門業種でも特に金額の大きいエレベーターリニューアル工事を重要視、元請け受注ターゲットとしてシフトしてきているのです。

今回の事例は、現在のようなコンサルタント的な提案エピソードではなく、以前勤務していたあるエレベーター会社で経験した、私がエレベーター専門コンサルタントを目指す大きなキッカケとなった内容となっています。
コンサルタントのプロフィールはこちらから

ある管理組合からのエレベーターリニューアル工事見積依頼

マンション概要

  • 築45年
  • 1~4号棟
  • 約200戸
  • 14階建て
  • ロープ式エレベーター 7台
  • 保守管理:メーカー系保守

ヒアリング・現地調査からの状況確認

元々は大阪市営(府営?)住宅を分譲化した団地型のマンションの元理事長だったが、今回エレベーターリニューアル工事を迎えるのに修繕委員を立ち上げ、いろいろとエレベーター会社へ工事見積もり依頼の問い合わせをされていた様子でした。

当時、エレベーター会社のリニューアル営業部責任者を任されていて、中堅の営業担当者とペアで見積対応にあたる事にし、まずは現地訪問に同行し、ヒアリングと現場調査から入りました。

築年数のわりに、乗場、かご内の外見上は古くなかったのですが、エレベーター機械室を見ると制御盤、電動機等の電気関係のリニューアルを2002年に実施しており巻上機は既設流用のままでした。
制御盤はまだ22年しかたってないですが、巻上機は45年経過していて、金属疲労、シャフト部からもギアオイルがけっこうな量床に漏れていました。

これって、人間で言うと頭の中の脳は40代でまだまだ元気なのに、体の部分が80〜90代なので、まだ頑張れるけど体が追いついていかない状況なんです。

今回で巻上機は交換しなければならないのですが、22年経過の制御盤も互換性の問題で交換する必要があります。

メーカー系保守会社はよくこういったやり方をしますが、私からすると中途半端な時期に工事をそれぞれしなければならないのが、これってユーザー目線なのか?と疑問に思います。
こちら修繕委員も4名で構成され、理事長も積極的にマンション管理を良くしていきたいと修繕委員のメンバーとよく意思疎通が取れている印象を感じました。

当初、管理会社からエレベーターリニューアルの見積提案がなされ、検討の余地がないような勢いで進めようとしているのを管理組合として、他社含めての検討が必要となったが、管理組合から各エレベーター会社に見積もりを依頼しても拒否されたり、なぜか管理会社の見積金額と同じより少し高い金額だったりするので、かなり不信感を募らせている様子でした。

その管理会社は全国でも管理戸数トップクラスで、当時所属していた会社でも全国的に保守契約実績がかなり多かったので、正直なところどういった対応をとるのか?営業責任者として難しい選択を迫られたのです。

いろいろと思案した結果、社内調整を経て積極的に営業展開する方向性を取る事にしました。

見積提案力を修繕委員会に認められ最終決戦の臨時総会へ

現地の機器を詳細に調査していくと「電機品は22年前に交換しているが、巻上機含めその他の各扉関係も型式後れと出来るだけ最新の安全装置をこの機会に取り入れたい」との修繕委員の要望から戸開走行保護装置を設置する為に扉関係をすべて交換する内容を提案しました。
エレベーターの故障の50%以上は扉関係が起因する不具合なのでこの2つの要因なら費用対効果も十分期待できるのです。

修繕委員からの相談で扉に網入りガラスの防犯窓付にしたいとの要望がありました。

かご内と1階フロアにそれぞれ防犯カメラが設置されているのですが、より一層の防犯、抑止力を高めたい意向でしたが、竣工時の建築申請副本内の申請図面を確認したところ防火上、窓付の扉は設置できない事が判明しました。

どうしても要望が高い場合は受注後に管轄の建築審査課や消防署に相談、確認に行く事で保留としました。

最後に、住民全体のイメージとして、大手エレベーターメーカーの安心感と比較してどうしても高くてもメーカー採用する傾向があるが、合意形成する上で納得・理解してもらうにはどうすればいいのか?
コスト的、機能的、技術的には納得しているがこの「何となく」のブランドイメージが一番難しい問題でした。

市内からは少し離れた場所ですが、1年前に今回のマンションに規模も年式もリニューアル仕様も類似した現場があったので、理事長と修繕委員全員をそのマンションのエレベーターに見学してもらうのは具体的にイメージしてもらいやすいのではないかと思いつき、そこのマンションの理事長、管理人に相談、許可をもらい見学会を実施しました。

直接、採用して利用されている方からの話を聞くことができ大変満足、納得してもらいました。

あとは、2週間後のエレベーターリニューアルを議題とした住民説明会を迎えるのみとなり、いい手ごたえを感じ取る段階まできたのでした。

住民説明は先に管理会社とメーカー系保守会社がプレゼンし、その後でしたが、2社のみの説明会だったのに30〜40人くらい集まられていて、マンション全体的でも関心が高いのだと感じました。
プレゼンも問題なく質疑応答もそれなりにあり、数週間後に臨時総会があるので、それまで結果連絡を待つ事になりました。

私がマンションのエレベーターコンサルタントを目指した理由

1か月たっても連絡がないので進捗について問い合わせたところ、メーカー系のリニューアル工事に決まったとの返答でした。

とても、残念ではありましたが、それよりも経過と理由が知りたかったので、修繕委員の方に話を伺ったところ、あの後本来は理事会、臨時総会で決議される予定だったのが、管理会社からの発案でその前に住民全戸にアンケートをとる提案が出されたとの事。

そのアンケートも管理会社主導で作成、配布、集計され結果は、住民の意見としてメーカー系採用の表が多い結果だった・・・。
住民全体の意見としての結果集計でメーカー系となった以上、覆す事はできず、そのまま決議されてしまったのでした。

「今まで、アンケートを取ろう」などと管理会社が言ってきた事がないのに、いきなりアンケートを実施して結果を突き付けてくるのは不自然極まりない。
そもそも、アンケート内容には工事金額等実務レベルの内容は全くなく、ただ何となくのイメージを答えるだけだった。
「何のための修繕委員、理事会か!?」と憤慨されていました。

「これが、管理組合と一業者の限界か・・・。」

私の中の大きな価値観、倫理観が崩れていったような感触を覚えています。

金額がいくらで組合のニーズに届いていなかったとか、修繕委員、理事役員で費用対効果から金額よりも今回はメーカーにした方がよいとか、消費者、利用者の検討結果により決定がなされたなら、何も言う事はありません。
ですが、今回のように情報操作のようなやり方までして事を進めるのが管理会社なのか、とある意味貴重な経験を積む事ができました。

実は、昨年に偶々、当時の修繕委員の方にばったり会う事ができ、その後の工事について話を聞く事が出来ました。

エレベーターの防犯窓の件、メーカー系は見積仕様に入れて契約したのに実際工事にかかった際、出来ないと言い出して管理会社と揉めているらしいです。

メーカー系でも、防犯窓の件は新築設計の知識が必要なので分業化された組織では把握、確認する事が出来なかったのでしょう。

皆さんがこのブログに辿り着かれたのは何かしらエレベーターの事で行き詰まりを感じてどうしたら良いのか調べて検索された方達だと思います。

同じような事が全国あちらこちらで起こっているのでしょうが、こういった事を解決できるのは日本で唯一エレベーターマネージメントだけです。

ぜひお困りごとを聞かせてください。

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