
マンション管理・修繕を取り巻く周辺環境について
市民生活における物価高に歯止めがかからない状況が続いています。2年ほど前からのコロナ禍からのあらゆる物資の生産力低下により海外からの輸入が滞り、市場に対する供給量が需要に追い付かなくなっています。生産物だけでなくサービス業についても同様で飲食、宿泊業についてもインバウンド需要に見合う人員確保が死活問題となり、人材募集しても集まらない、高齢化により退職者が増えさらには後継者不在が顕著となり、仕事があるにもかかわらず業務が継続できない黒字倒産が、全国的に増えているとか、エレベーター業界でもよく聞くことがあります。
マンション修繕管理における基本指標となる長期修繕計画書も国交省では5年毎に見直しを推奨していますが、30年の計画スパンで数年先の各種修繕項目の計画予算を算入するのに困難を極めるのが、ここ最近の物価上昇率から、どれくらいの想定で将来の工事価格が反映できるか?今までの実績からの予想では追いきれなく、各専門業者に問い合わせ、概算見積依頼をしても最初から見積有効期限を超過する案件については、辞退されたりするのが当たり前であったり、見積作成による現地調査が必要な場合は調査費用を要求されたりと、修繕設計コンサルタント泣かせの話を普通によく聞かれるようになりました。
国交省の指標による大規模修繕工事では12年に一度とされていますが、この物価高の状況下で計画通りに実行していけば、実施する度に修繕積立金の繰越残高が目減りして、計画段階で現状より修繕積立金を増額しなければ赤字となる長期修繕計画書がほとんどのマンションで顕在化しています。
第1回目の大規模修繕工事を12年前に実施して、2回目の大規模修繕工事を計画、検討する際に管理組合理事、専門委員会が1回目の工事実績をベースに2回目の長期修繕計画に則って想定予算が出されますが、まず仮に1回目と同じ工事内容、項目とした場合で今回の2回目の想定される工事金額は、ほぼ1.5~1.8倍と見立てるのが無難と思われます。
エレベーターのリニューアル工事でも、4,5年前ではメーカー系保守会社によるロープ式エレベーター見積金額で1200から1000万円程度だったのが、2300から1900万円、見積有効期限3か月が経過して再見積もりを要求して、提示してきたのが前回から2割増額されたりとか、消費者からすると信頼関係を損なう、不信感が募る思いがする状況下です。
修繕計画におけるマンション所有者、管理者の取り組み、対応策について
それは、一般論にとらわれず、柔軟に現状に則した修繕計画を検討し実行していく事です。
それでは、従来の長期修繕計画は無意味で、何をどうしていけばよいのだろうか?となるのですが、既存の長期修繕計画は重要な指標となるのは変わりません。基本的な考え方や参考資料としては必要ですが、例えば冒頭にあった、大規模修繕工事は12年ごとに実施に関しては、個々のマンション毎に必要性を検証して実施時期を延長させることを検討視野に置く事から始めるのです。
1回目の大規模修繕工事ではどこまでの範囲のどういった項目のどんな規模の数量の工事を実施したのか?それにより2回目は1回目と比較、照合させて大体、どれくらいの範囲、物量、内容になるのだろうか?前回は設計施工方式でどんな修繕設計コンサルタント会社を招致して、どういった選定基準、理由で決定して当時の業務結果に対しての評価はどうであったのか?
ここ最近、設計会社、管理会社による談合問題がマスコミ等でクローズアップされているが、実際はどうで、今回も同様の設計施工方式で進めるのか?それとも責任施工方式に切り替えて、さらに管理組合主導で業者選定を進めていくのか?・・・・
将来に向けての具体的なアクションを想像、想定をして管理組合、住民全体を対象とした有力な人材を専門委員会で呼びこみ、明確な目標と課題を掲げて理事長を中心とした体制の構築からスタートさせなければなりません。
あくまで、管理会社はここに至るお膳立てをするだけであって実行の中心、権限は管理組合であるといった姿勢を確立させることが、各業者に対する談合防止につながるのではないかと私は思います。
大変革期に突入しているエレベーター保守会社
メーカー系保守会社の市場構成期から独立系保守会社の進出、シェア獲得期が約50年経過し、急激に保守台数の占有率を増加し市場に、大きなインパクトを与えている独立系保守会社のM&Aがある一定数となると、メーカー系保守会社による独立系保守会社のM&A、子会社化が広がり、業務提携を推し進める動きも見られるようになりました。今もそういった動きが進行中で、各エレベーター保守会社も生き残りをかけて売り上げ、利益確保、経営改善、人材登用確保と目まぐるしく変化していっています。業界に携わっている私でもその情報収集に後れを取る事があります。
ある物件のエレベーターリニューアル工事の相見積もりを取得しようとしても、その仕様、スペックやメーカー、系列会社、業務提携先が複雑に絡んで以前のように、単純に問い合わせて見積依頼すれば簡単に見積が取得できる状況ではなくなってきました。当然、会社名が違うので別会社の認識で見積もりを依頼して、より良い条件の契約先を検討する為に数社選別して見積依頼をかけるのですが、同系列、業務提携先の会社間となると、見積辞退、見積は提示されるがそういった背景は明かされず金額差のない見積書しか収集できなかったりと、思うように検討作業が進まない傾向が強くなっていきています。
そこに追い打ちをかける原材料費の高騰、作業員人材不足による長納期化、さらにはつい最近のアメリカ・イラン情勢による原油価格高騰が大きな影を落としつつあります。
ガソリン価格は政府が補助金を投入して、安定化を図る動きがされていますが、工業製品に使用されるナフサや、プラスチック原料油、工業用油(ギアオイル、作動油)は今現在、深刻な物流問題に直面しています。
同じ油なのでガソリン同様、国が備蓄供給量を確保して価格高騰の抑制を主導してくれると思っていましたが、どうも生活に直結しない工業用製油は適応除外されているようで、業者間で工業用油ドラム缶の取り合いが全国的に頻発しているらしいのです。
いわゆる“買占め”が横行しており現場のエレベーター工事会社へとんでもない単価での提示や、そもそも入手できない事態にまで発展している状況となっているそうです。
そうなると、間違いなくさらに直前での工事計画の変更による遅延化が進み、価格見直しによる増額の申し出、有効期限切れ見積の再見積もりによる増額提示、新規見積についてはさらなる増額見積価格設定となります。
もはや、単純に相見積もりを取得して高い、安いだけで業者選定できる状況ではなくなりつつあります。
想定外、混乱期到来に向けた専門家活用の重要性
専門家による修繕コンサルタントによる長期修繕計画作成、エレベーターに特化した専門コンサルタントのアドバイザー活用があるべき道筋を導き出す事ができます。
10数年前のままの見直し作業を一度も行っていない長期修繕計画書を所持している、エレベーター保守部品供給終了問題を抱えリニューアル工事をそれまでに検討、工事発注の必要に迫られている所有者様、管理組合様はできるだけ早急に修繕計画実施に向けた合意形成をすすめる準備を整えて、まずは情報収取から専門家にご相談する事をお薦めします。



