
エレベーターリニューアル耐震対策は98,09、14 どれがよいのか?
9月にエレベーターリニューアル工事の耐震対策工事98,09、14対策について、大雑把に概要的なイメージで紹介しました。
エレベーターリニューアルの耐震対策工事 98,09,14について – ブログ | エレベーターマネージメント
エレベーターを地震に強くするのに、“松竹梅”と3つのグレードがあって最新式の基準にすれば、現行法の新築マンションのエレベーターと同等の耐震力となるので、毎年の定期検査報告の耐震に関する項目がすべて是正なしとなる。しかし、最新基準となるとほぼ、既存設置エレベーター会社のリニューアル提案しか対応できないのでそれなりのコストが上ってしまうので、特に法的強制力がないのであれば、そこまでこだわる必要があるのか?ひとつ前の09耐震か、よりコスト重視なら98耐震でもどうなのか?その判断についてはどういった対策内容の工事なのかまでは紹介しきれてなかったのですが、今回は一歩踏み込んでその詳しい内容について、出来るだけ分かり易く、イメージしやすいようにいろんな種類のイラストを交えながら解説していきたいと思います。
エレベーター耐震対策の14耐震はなぜ対応が限定的となるのか
3つのグレードはそれぞれ法改正があった年度の耐震指針に則ってその耐震対策の工事内容、工事範囲、仕様、構造計算、材質・品質に関する規格の証明等多岐にわたり、それぞれがその年度指針によって分類化され、最新制度に改正されるごとに厳格化されてきています。
ゆえに、最新の14耐震となると既存のエレベーター構造的な計算書や素材、どこのどういった規格に則って製作されて品質が確保されているのかといった、製造会社しか保持していないデータが数多く必要となるのです。そのベースとなる最も信憑性の高い裏付けとなる資料が、新築工事中にエレベーターの設置申請書類となる確認申請副本です。
構造的な荷重計算、耐震に関する設計過剰安全率や、部材に対してのミルシート(品質保証)、認定書等が副本に添付されているので、現行法の耐震基準にどこまでが満たせている、満たせていないかが判別でき、満たせていない部位、部品については交換、補充、補強をした耐震対策を施すので指針基準を満たせているといった判断が可能となります。
これには、かなりの設計検証が必要で、建築設計、機械設計、建築の法的知識と製品開発に関するデータ解析がある程度駆使できる技術者でないと対応は難しいので、そういった人材を抱えた設計部隊を所持しているエレベーター会社でないと他社製エレベーターの既存不適格を解消する14耐震対策工事を請け負う事はできないと思われます。
耐震対策工事詳細項目について
機器の耐震性強化
巻上機、制御盤等の転倒・移動防止
〇制御盤上部支持 98、09、14
〇巻上機防振ゴム振れ止め 98、09、14
〇巻上機受け台補強板取付け 98、09、14
〇巻上機防振ゴムボルト固定 98、09、14
〇機械台連結金具 98,09,14
主索等の綱車からの外れ止め
〇巻上機 09、14
〇そらせ車 09,14
〇吊車(かご側) 09、14
〇吊車(おもり川) 09、14
〇調速機ロープ張車(かご側) 09、14
〇調速機ロープ張車(おもり側)09、14
釣合い重り脱落防止
〇通しボルト 14
〇おもり片とたて枠のかかり代の計算 14
釣合い重りブロックの脱落防止
〇枠連結金具 98.09,14
〇押さえ金具 98,09,14
〇釣合い重りフレーム補強板取付け 09,14
〇釣合い重り枠強化 14
昇降路内引掛り防止(主索に対する)
〇縦保護線 09、14
〇主索振れ止め 09、14
昇降路内引掛り防止(主索以外の長尺物)
〇移動ケーブル縦保護線(かご側レールブラケット角部) 98、09、14
〇移動ケーブル保護線(配線ボックス対策)09,14
〇移動ケーブル保護金網 98,09,14
〇移動ケーブル中間振れ止め 09,14
〇調速機ロープ側立柱つなぎブラケット 09,14
〇釣合い重り側立柱つなぎブラケット 09,14
昇降路内引掛り防止(上記以外)
〇調速機ロープ振れ止め(かご側) 98,09,14
〇調速機ロープ振れ止め(釣合い重り側) 98,09,14
〇調速機ロープ振れ止め用保護線 98,09,14
〇終点スイッチ保護線 09,14
ガイドシュー等の脱レール防止
〇ガイドシュー外れ防止(かご側) 98,09,14
〇ガイドシュー外れ防止(釣合い重り側) 98,09,14
レール及びレール支持材の強度増し
〇レール強度(かご側) 09,14
〇レール強度(釣合い重り側) 09,14
〇レールブラケットの強度 (かご側) 09,14
〇レールブラケットの強度(釣合い重り側) 09,14
〇中間ビーム等の強度(釣合い重り側側) 09,14
〇釣合い重り中間ストッパー 09,14
〇地震その他の震動に対する構造計算 14
〇構造材の材質、強度の確認(ミルシート) 14
運転情報提供
〇かご内への情報提供(表示) 09,14
〇かご内への情報提供(音声) 09,14
〇乗場への情報提供(音声) 09,14
〇乗場への情報提供(表示) 09,14
*14耐震対策には、構造材(レール、レールブラケット、中間ビーム、かご本体、釣合い重り本体)のミルシートが必要。
眼で見るエレベーター耐震対策






耐震グレード選定は専門家の意見参考をご検討ください。
今回、詳細にエレベーター耐震対策について記載紹介しましたが、上記内容を把握して判断する事は一般の方ではほぼ難しいです。
エレベーターリニューアルで耐震対策工事は戸開走行保護装置に次いで価格のインパクト差額が大きいので慎重に判断したいところですが、このマンションではどの指針の耐震対策がよいのかについて、はっきりとした答えは導きにくいのが現状ですが、周辺環境、区分所有者皆さんの考え方、修繕予算等加味して、ご相談ください。
少なくとも最善の方向性だけは見出せるはずです。



