
慢性的な状況となった契約から着工までの長期的な待機期間問題
コロナ禍以降から端を発した半導体遅延問題から、数年経過しましたが、一部改善の兆しが見え始めた時期もあったものの、状況を見渡すと大手メーカー系中心に一番、よく聞かれる納期回答が契約から着工まで約1年~1年半。丸2年必要と回答してくる保守会社もあります。
比較的、独立系保守会社の納期回答はそれほどではありませんが、それでも大手独立系となると約1年、早くて8か月といったところでしょうか。
もはや、一過性のコロナ期に勃発した海外工場の生産キャパシティの問題ではありません。
この数年来の状況から、大手メーカー系の長期納期問題を機に独立系に切り替えた管理組合、賃貸オーナーが相当数存在する影響がここ最近、顕著になってきています。
一番の問題は人工不足です。
建設業界共通の問題となっていますが、労働人口の減少に働き方改革により実作業日数から、強制的に休日を挟む事より、1プロジェクトについての期間が単純に長期化に拍車をかけて年間の消化工事数が減少しています。
工事作業員の年間作業計画を聞くと、ビッチリと1年間隙間なく埋まっている状況でした。
しかも、工事期間中エレベーター利用停止から階段利用となると、この猛暑を避け春、秋工事を必須条件とするならさらに着工時期は先延ばしになってしまうでしょう。
管理組合にとっては、期を跨いでエレベーター施工業者を決定した役員と、実際施工する期の役員が入れ替わって予算計上、実行予算、仕様内容、意匠決定、仮設計画、住民説明等十分な引継ぎをしなくてはなりません。
管理組合役員様もそうですが、管理会社フロント担当として、プロジェクト継続引継ぎの役割等、重要性も益々増してくるでしょう。
リニューアル工事契約後、着工、工事中、完成後のトラブルが急増中
契約後着工までのトラブル
業者選定、工事発注後1,2年の着工時期までかなりインターバルがあると、次期役員に現役員が取り決めた契約仕様内容、工事概要、工程等を正確に引継ぎしないといけません。役員の半数改選でしたら、問題ないでしょうが、全員が入れ替わってしまうと細かい内容まで引継ぐのはなかなか困難と思われます。その場合、よく聞くのは現理事長が次期修繕委員を受け持つといったケースを取られます。
これだと、今までの工事の流れを把握した修繕委員が理事長の補佐として、組合に関わるのでスムーズに運営が為されているようです。
着工直前、着工、工事期間中のよく聞くトラブルでは、エレベーター会社側の工事契約に関わる営業担当と契約後からプロジェクトを引き継いで管理していく工事監理担当者との意思疎通、連携不足からくるコミュニケーションエラーです。
営業担当者の説明と工事担当者の話が食い違っていたり、工事担当者が窓口になった途端、問い合わせした返答連絡が遅い、あるいは何度も会社に電話しても折り返し連絡がない等、これらが積み重なってくると管理組合様にとって大変なストレス、不信感につながっていくのですが残念ながら大手、中小問わずのエレベーター保守会社ではよくある話です。
営業担当者はあくまで受注活動に重点を置いていますので、契約決定すると、次の見込み案件に営業活動のプライオリティを置くようになるのと、当然、リニューアル製品を売る事に特化しているので、工事の詳細な段取り、仮設状況、工程表等については対応しきれない実情があります。
工事担当者は工事監理について、自身が受け持つ担当現場の工事に関する顧客対応管理から現場状況、製品に関する事まで受け持つ事になっていますが、昨今は一人頭の抱え込む現場数が多く、対応できるギリギリの状態で毎日業務を熟している様子です。
最初の段階で営業担当者から、十分な引継ぎを受けていないと情報不足から対応が遅れたり、二の足を踏んでしまったりと結局は社内の問題なので顧客側にそのような事情は通じなく、顧客への謝罪説明としては社内担当者間の連携不足でしたといった、釈然としない理由となっているようです。
やはり、実情からして営業担当者はある程度の工事監理に関する知識を持ち合わせて、工事監理担当者がそのプロジェクトに向き合える態勢になるまで、きっちりとあらゆる顧客対応をする事しか解決策はないように思います。私のエレベーター会社在籍時でも、日常的にそういった問題がありましたが、営業、工事がお互いに足りないところを補いながら顧客、現場に向かっていかなければ、顧客満足は得られないと日々痛感していました。
工事中、仮設計画に関するトラブル
“工事期間中エレベーターは利用できなくなる“これが、住民様の最大の懸念であり、関心事と思われます。
エレベータ施工会社から具体的な実際の工事工程表が出た段階で、できるだけ速やかに共用部へのこのエレベーター利用停止期間を記載した告知文書を、掲示公表する事をエレベーター会社と打ち合わせて実施してもらう事をお勧めします。
尚且つ、規模の大きいマンションでは適切な時期に、住民説明会を施工会社に開催してもらったりして、マンション内住民に情報が行き渡るようにしなければなりません。
着工初日の大型機材の搬入には運搬トラック搬入経路、駐車位置、作業スペース、周囲近隣への通行配慮等出来るだけ詳しく詳細に表現した説明文書、イラスト等を配布、掲示して、事前に住民からの問い合わせ、質疑対応に備える事が重要です。機材、廃材置き場についてもはっきりと認識できるように掲示し、生活にどういった影響があるかをイメージしてもらいやすいような内容をエレベーター会社に要求する事が重要です。
こういった事が不十分ですと、工事が始まってからエレベーター会社、管理会社、管理組合宛にいろんなクレームが殺到するので慎重に細心の注意を以って取り組むべき事と思います。
工事完成後のトラブル
工事完了後から、まだ1か月たたないくらいの時期に不具合が発生したというのは残念ながら稀にある話です。
ケースバイケースとなり、いろんな事情があるのですが、据付工事後の調整不足が一番多いのではないかと推測されます。
期間中のエレベーター利用停止を約束工期内に収めるのは必須であり、それまでに早く完了するなら早く終わらせたいのがお互いの共通認識のはずなのですが、最終確認作業である据付後の調整、検査作業の時間が十分でないと、初期トラブルを発生させてしまう要因となります。
最近では、工事作業費の追加オプションとして1日の作業時間を延長して、期間を短縮させる見積仕様を設けている会社もありますが、いずれにしても無理のない試運転調整期間の確保は必須です。
この件については、管理組合様も真摯にご認識を以って協議打ち合わせとご理解をお願いいたします。
もし、停止不具合トラブルとなった場合は、管理組合としては深刻な事態と受け止めざる得ないと思われます。早急に原因についての会社としての見解報告書の提出を要望し、素人の立場でも理解、納得のできる内容にしてもらうように働きかけてください。
エレベーター管理、工事に関するすべてのご相談をお寄せください。
ここ最近、エレベーター保守に関する故障トラブル、リニューアル直後の初期トラブルに関するご相談が増えています。
原因報告に関しての説明がかなり専門的すぎるとか、逆に抽象的過ぎていいかげんに感じてしまう、こちらが求めている、聞いている内容と違った回答であったり、様々なお問い合わせをいただいてますが、随時御納得、解決できるように出来る限りの解説回答いたしますので、まずはお問い合わせフォームを送信ください。