
自分のマンション設備エレベーターの資産は自分で維持管理を考えよう
部品の供給が止まってしまうので、それまでにエレベーターリニューアル工事を実施しなければならない・・・。ほとんでの場合、管理会社やエレベーター保守会社から案内が管理組合にきて、中身もよく分からない中でまずはどれくらいの金額がかかるのか?リニューアル工事といってもエレベーターのどこのどんな事を工事するのか?そもそも、エレベーターリニューアル工事の見積もりはどこへどうやって取得すればいいのか?・・・
一般の方の大半がそのような状況に陥るのですが、
“こっちは素人で分からないので管理会社さんにお任せします”
“今うちのエレベーター保守をお願いしている会社が一番よく機械を分かっているはずだからそこに任せればいいんじゃないか。”
“メーカーが保守部品を製造しなくなるのだから、こういった大規模な工事はメーカーにしかできないんじゃないか?メーカーにしか見積は取れないんじゃないか?”
といったケースが多いのではないかと感じています。
いずれも、全く間違いではありませんがマンション設備は区分所有者皆さんの財産です。専有部分とは違い、自分以外の方が共用して利用してるので自分の持ち物ではないと錯覚してしまいがちですが、マンション全体の共用部はそこに区分所有している皆さんの持ち分に応じて毎月の管理費、修繕積立金を支払って、日常の管理、修繕や計画周期には大規模な修繕工事を皆さんで検討、実施、維持管理して資産価値を維持、高めていかなければなりません。
ある日突然、エレベーターが停止してしまって、復旧するのに数週間、数か月もかかってしまう・・・!?なんて、状況はあってはならないのです。
かといって、今までエレベーターの事など考えたこともないし、自分のマンションのメーカー名か、大手数社のエレベーター会社しか知らない。どうやって検討していけばいいのか・・・?
その第一歩の、まずエレベーター会社に見積依頼をかける前の準備段階について紹介いたします。
リニューアル工事検討の第一歩、共通した仕様で見積依頼を実施
とにかく、現場のエレベーターを見てもらって、あとはお任せで見積をお願いしよう。あるいは、現保守会社から取得した、管理会社から取得した見積書の金額を抹消して、この仕様で見積を依頼する・・・。
この場合でも、依頼先から見積書は取得できますが、特に工事仕様お任せとした場合、各々の会社の得意な仕様で当然見積されますので、それぞれの見積に計上した仕様がバラバラの状態となります。
すでに提案を受けている会社の見積の仕様で見積依頼をされても、その会社ができない仕様であっても、その仕様の必要性が高くないと判断した場合、代替えできる仕様での見積提案だったり、全くできない仕様の場合はその仕様を含まない見積で提出されたりして、比較検討が難しいケースが多いです。
1社、1社にそれぞれの見積説明を聞いて、どの仕様ができる、できない、見積に含まれる、含まれない等、かなりの時間と労力が必要になってくるかと思いますので、まず、メーカーからの部品供給終了の部品はどこの部品・箇所かの確認をした上で、その終了する部品を当然含まれた工事仕様の見積でなければなりません。
供給終了の部品に、基板類や巻上機に含まれるパーツがあれば、巻上機もリニューアル工事の交換対象になります。
巻上機が含まれる、含まれないでは金額に大きな差が生じることになりますので最優先事項となります。
最も主要な箇所である制御盤と巻上機の次は、
主ロープ、調速機、調速機ロープ、張車、制御ケーブル、着床装置(インダクター)、かご上操作ボックス(かご上ジャンクションボックス)、搭内リミットスイッチ、ドアモーター(ドアマシン、ドアユニット*ドアマシン、ドアモーター既設流用オーバーホール)、ガイドシュー、かご内操作盤、乗場操作盤、インターホン、かご内天井照明LED化
これらの部品については、ほぼどこのエレベーター会社のリニューアル標準仕様に組み込まれていますが、中には含まれていない場合があるので確認が必要です。
以上が部品供給終了の対応で最低限度の必要なリニューアル工事仕様となります。
リニューアル工事仕様のオプション仕様の検討
ここからさらに、安全性、利便性と意匠性を向上させたい意向があれば
自分のマンションのエレベーターに新たにこの機能を付ければ、より安全性が増す、より使いやすくなる、便利になる、見栄えがよくなり質感が増す、イメージチェンジが図られる、入居希望者に資産価値アップの印象を与える事ができる・・・。予算との兼ね合いも当然ありますが、20、30年に1度のエレベーター工事なので、この機会に今後を見据えてマンションのグレードアップを図る管理組合の割合は非常に多いです。
(安全性向上)
〇戸開走行保護装置
万が一ブレーキ故障などにより扉が開いた状態でかごが昇降しようとする場合に通常とは別の回路を設けてエレベーターを緊急停止させる装置。
運転制御プログラムから独立した戸開走行防止装置制御盤
ブレーキの2重化
非常停止時の移動距離の規定化
〇地震時管制運転装置(S、P)、
地震が発生した際に揺れを感知しエレベーターを最寄り階で停止し戸開。かご内の閉じ込めを防ぐための安全装置。
〇停電時自動着床装置
雷、災害等で停電発生時にエレベーターが途中階で停止した場合、閉じ込め状態からその危険性を防ぐために非常用のバッテリーにてエレベーターを最寄り階まで移動させ戸開着床させる装置。
〇耐震対策工事(98、09、14対策)
エレベーター機械室内、昇降路内の構造的機器について強い地震の揺れに対しても機器が壁、床からズレない、外れない、構造機器そのものの強度を増強する工事。
1998年、2009年、2014年に法律改正となり、より厳しく基準化されて、この3グレードにより対策工事の範囲、内容、仕様、基準の明確化が分かれています。耐震対策工事のそれぞれの内容については非常に複雑、難解なので、分かりやすく単純に表現すると、
98耐震はエレベーター機械室中心、09耐震は昇降路内も含める、14耐震は構造機器の部材強度、規格、基準を問われる(実際的には製造会社しか対応不可)となります。
(利便性向上)
〇車椅子仕様の新規追加
従来の操作盤より低い位置に各乗り場とかご内両側面に専用の操作盤設置、両側面壁に手すりの設置、背面の壁に鏡を設置し、車椅子の方が目的開到着後、鏡を見ながらバックで出られるようにする仕様と出入口に障害物検知センサーを設置し、車いすや人体が出入口にさしかかった際、検知し閉まりかけたドアを反転させて接触を防ぐ。
〇マルチビームドアセンサー
先の車椅子仕様の障害物検知センサーを出入口床から天井面までの高さまでの範囲でドアと人体等との接触を防ぐ仕様。
(かご内壁、床 意匠シート貼工事)
かご内の両側面、背面の壁と出入口の扉に意匠シートを貼り、見栄えを向上させる。ほぼ新築時と同等の印象になります。
(かご内天井照明交換工事*LED化含む)
かご内照明のLED化であれば、現状の天井のデザインのまま、照明部アクリルカバーの中の電球を蛍光灯からLEDに変えるのみとなります。
天井LED照明交換となると天井部照明器具一式交換となり、照明カバー等のデザインも変わります。
照明をLEDに変える事により、照度もアップし全体の印象も明るく感じられるのですが、汚れ、傷が目立ってしまう事になるので、上記の意匠シート貼替とセットで検討される事をお勧めいたします。
専門家の活用を推奨します
上記の検討作業はもちろん、一般の方でも可能です。安全性の為どこのどういった仕様でなければならない、この仕様があれば便利になるからした方がよい・・・しかし、あれもこれもとなると予算が膨大に膨れ上がってしまう・・・。
本当にマンションにとって、必要な仕様はこれとこれだ等と、一つ一つの仕様ついて理解した上で、必要、不要かを判断するのが大事であり、それを一般の方に一時に体得するのはかなり難しいと思います。
相談ベースでもけっこうですので、お気軽にお問合せしてみてください。