
着工納期の長期間化
もはや慢性的な人員不足がコロナ明けから現在まで継続していて、業界内でもかなり深刻さが増している状況と言えます。
エレベーターの技術者と一言で言っても、点検作業員とリニューアル工事を専門にする作業員は一般的に分業しており、問題となっているのが新築での新設工事とリニューアル工事要員が世代交代等から労働力不足が顕著となっています。一般の若い世代から見たエレベーター関連の仕事といったらどんなイメージを思い浮かべるのか?世の中に無くてはならない重要なインフラ設備なので、需要のある安定的な業界イメージの反面、24時間夜間でも緊急の故障があれば現場に急行しなくてならない、当然土曜、日曜も同様にシフト制で出勤もある、工事要員では、建設業同様、現場作業なので肉体的、体力的にきつい、夜間作業や、祝日、お盆休み、正月休み等の世間一般の長期休暇時に工事期間が組まれる事が多いので、仕事とプライベートをはっきり切り分け、両立する事を優先する若者世代にとっては嫌厭される傾向が強いと思います。
人口減も相まって新しい若い世代が入ってこないので、中堅からベテラン世代に業務が集中して過密状態になり、少し前まで作業員による重度の労災事故が多発していました。その流れを受けて例の働き方改革から、今まで詰め込んでいた工程に休工日を設けて工事期間を延長する業者が増えています。
よって、限られた枠の中で専門性の高いリニューアル工事をこなすには必然的に枠がどんどんと埋まっていくので、未だかつてない着工納期が必要となっている状況です。
コロナ前では、メーカー系保守会社、独立系保守会社ともおおよそ、契約から着工まで4か月から6か月程度でしたが、特にメーカー系では早くて1年、通常回答では2年の期間が必要のようです。
分譲マンションの輪番制では業者決定した理事会役員メンバーと工事進行管理のメンバー、着工、完了時のメンバーの3世代に跨る事となり、連絡、引き継ぎ事項の継投が大変になってきていると聞きます。
極端な例かもしれませんが、業者選定の要因の一つに工事の時期、期間も含まれるケースが多いので重要なポイントとなっていくと思われます。
見積価格が上昇傾向
25~30年に一度とはいえ、マンション設備の更新工事では高額な部類になるエレベーターリニューアル工事にとって、一般的に工事価格は重要な要素であり、より、高い安全性、利便性、意匠性をバランスよく加味した検討が理想であると思われます。
以前から伝えているように、原材料とくに半導体関連の基板関係電子部品が納期長期化と相まって価格の高騰が現在も進行中です。見積有効期間が30日と見積書に記載され、1か月後に同じ内容の見積を依頼すると約1割の増額となっていたりするのは、もう珍しい事ではなくなってきました。
リニューアル工事のように高額でまとまった内容で、そのような短期間で発注するのはほぼ不可能なので、そういった事はないでしょうがそれでも、審議検討から1年経過後に、いざ発注となった際に問い合わせたら、見積再提出させてほしいと答申され、増額された見積で、再度検討し直すといった話も聞きます。
コロナ禍前から、2,3割、もっと以前の7,8年前からだと、倍以上の増額といった価格の推移を見せています。
もちろん、一般論としての私の見解なので、具体的に業者を絞り込み、仕様をそれなりに共通化し、より好条件を引き出せる見積項目を提示する事によって高品質かつ低価格のリニューアル工事見積を収集する事は可能かと思います。
油圧エレベーターリニューアルの最近の傾向

新築で油圧式エレベーターが新設されなくなって20年以上経過し、大手メーカーは油圧式エレベーターの部品供給停止を告知していますが、当初から油圧式エレベーターを機械室レス型ロープ式に入れ替える方針を掲げていました。
内容は油圧ユニット、制御盤、油圧シリンダー、レール、かご等ほぼすべての主要構成品目を入れ替えてしまう為、かなりの高額であるのと工事期間として、エレベーター停止期間が約1か月~2か月弱かかってしまう為、なかなか検討が進まなかったり、同じ油圧式エレベーターの構造のままで機器を新しく入れ替える油圧制御リニューアルが独立系保守会社で実施されるケースが増えてきました。現在でもこういった内容の相談が多く寄せられています。
こういった市場動向を見極めたのか、最近になって大手のメーカーで油圧式エレベーターのリニューアルを油圧式で提案するリニューアルパッケージの開発が進んでいます。
すでに一部の大手メーカーでは制御盤と油圧ユニットの制御リニューアルであったり、油圧ユニットを既存流用して制御盤と電気関係のみ交換するパッケージの営業展開がみられるようになりました。
消費者にとっては、選択肢が増えるので歓迎すべき事ですが、ここでも人員不足の問題から油圧式エレベーターの技術を持ったベテラン職人が非常に少なくなっていて、思うような営業対応ができていない実情があるようです。
リニューアル工事 実施、発注、検討時期のプランニング
自分のマンションに設置されているエレベーターがどこの製品で、何年製、何と言う機種でメーカーから部品供給停止の案内が公開されているのかをまず確認して、その停止となる部品がどこのどういった部品で何年に打ち切られるのか?それによっていつにリニューアル工事を実施しなければならないか?
その実施時期から逆算して、いつまでに発注しなければ製造、準備期間を勘案して検討開始しなければならないか?
今後も材料、人員コストは上昇傾向が続くでしょうから、少しくらいなら前倒しでエレベーター工事を検討して早期に発注する事がいいのではないでしょうか?
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