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リニューアル

エレベーターリニューアル工事の見積グレード

2025年6月30日

2025 06 30

目的からどこまでの工事範囲とするか

(制御盤リニューアル、巻残し、エコノミー)

ほとんど皆さんのリニューアル工事の目的は保守部品の生産が停止してしまう事に対応すべく、設備機器を新しく入れ替えて今まで通りの保守管理を継続する事だと思います。

その生産が終了する保守部品の大半のケースは制御盤内の制御系の基板関係、半導体ユニットになり、まずは制御盤を第一に工事仕様として取り入れます。

制御盤から派生して、そこから紐づく電気関係部品として制御盤と昇降路内のかごを繋いでいる制御ケーブル(トラベリングケーブル、テールコード)、かごの位置信号を送信する着床装置、かごの上下昇降動作の上がりすぎ、下がりすぎを検知する重要な安全装置である、塔内上部と下部のリミットスイッチ等が昇降路内の電気部品類になります。

各階乗り場で行先の上、下のエレベーターを呼ぶための押し釦が組み込まれる乗場操作盤、かごに乗り込んでから自分の行きたい階、数字となっている目的階を登録する押し釦や現在着床位置を表示する表示機(インジケーター)、非常時に外部にエマージェンシーを求める非常用の釦と主にエレベーター点検員が点検作業用に使用する蓋にカギ穴がついているかご内操作ボックスも交換対象となります。かご内では天井照明が蛍光灯のままなら、LED照明とする事も必要となります。

電機関係仕様の最後としてはエレベータ機械室内の巻上機に装着されている電動機(モーター)を交換対象とするか、電動機は年数的にも劣化進行が見られないので既存流用とするなら、新しい制御盤と接続するエンコーダーのみを新規品交換とするケースもあります。

以上が、エレベーターリニューアルの必要最小限、最低限の工事仕様であり、

制御盤ともう一つの主要機器である動力関係となる巻上機を既存流用するので

“巻残し”と業界用語では言われている仕様となります。

あと、エレベーター会社によって仕様グレードの呼び名は様々ですが、最もリーズナブルといった観点から“エコノミー”と呼称されるエレベーター会社が多いようです。

(制御リニューアル、標準仕様、スタンダード)

上記グレードの(制御盤リニューアル、巻残し、エコノミー)に動力部である巻上機を加えた、最も採用実績の多い仕様グレードなので、いわゆる標準仕様、ベーシック仕様、スタンダード仕様として設定している内容です。

全リニューアル件数の7割近くを占める割合なので、お任せ仕様で見積依頼をすると、このグレードバリエーションで見積仕様として提示してきます。

巻上機を交換するので、付随するワイヤーロープも交換となります。機械室内では調速機と言ってかごの昇降と同調して連動した細いワイヤー(調速機ロープ)が巻上機横の張り車から昇降路最下部ピットの張り車を伝っています。

かごの速度をワイヤーを介して機械的に検知し、異常速度の場合緊急停止する安全装置ですが、交換対象となっています。

ロープ式エレベーターは最上部の機械室内巻上機のシーブ(滑車)を軸にかごとその反対側の錘(カウンター)をつるべ式にしてバランスを取って昇降しますが、その軌道上にレールがあり、かごと錘(カウンター)をそのレールに沿ってガイドするのが、ガイドシューと言われる部品です。

かご、錘がレールに沿って滑らかに稼働する為、保守点検ではレール表面に潤滑油を注油したりしてますが、レールに対して摩耗、消耗する部位なのでリニューアル時には交換し、スムーズな乗り心地の状態を維持する為に必要な部品となります。

メーカー系保守会社、独立系保守会社ともにこの制御盤と巻上機をセットとする見積提案は多数を占めていますが、実は中身に違いがあります。

それが、この次の安全対策仕様、既存不適格解消仕様やフルスペック仕様となります。

(制御リニューアル既存不適格解消仕様、フルスペック)

リニューアル工事仕様の中では最上級仕様となります。部品供給終了の対策以上にさらにグレードを上げる目的とするのが、この仕様になるのですが、ここでメーカー系保守と独立系保守の見積仕様に対する位置付け、考え方が違ってきます。

メーカー系では、より安全性を高める、利便性を高める、見た目の意匠性も高める意識が強い提案に対して、独立系では必要以上の仕様をたくさん盛り込むより、通常使用に必要な安全性を確保した上で、コストを意識した提案といった捉え方とする考え方に分かれます。

メーカー系エレベーター保守会社の見積では、巻上機を含んでいると必然的に既存不適格解消の一つである戸開走行保護装置が自動的に付加されたり、耐震補強や最新の現行法基準となる耐震グレードを最上グレードとしてセットされたりして、より安全性にしても充実度の高い仕様のカバーリング構成となっています。

対して独立系は、基本ベースは今まで通りの保守管理の確保が最大の目的であり、グレードをアップさせる仕様については、追加オプションとして顧客の要望に合わせたラインナップにしています。

さらにメーカー系は、かご内の壁、かご扉、床や乗場扉、三方枠もダイノックシート貼り、塗装したり、天井デザインを一新するのに、天井照明部分を一式交換する仕様もパッケージ化して顧客満足度をアップさせる取り組みが見られます。

どの会社のどのグレードにするかは自らの選択、判断次第

見積仕様項目によっては一つの項目で数百万円の差額となるオプションもあるので、自分の所有、管理するエレベーターの利用状況、周辺環境、意識と将来的な観測も踏まえた判断と意思疎通によって最適なリニューアル工事仕様を見出していくしかありません。

まずは、その一つ一つの専門用語となる知識を持って検討するのに、やはりその道の専門家が必要ではないでしょうか?

あらゆる要素を検討材料として、皆様の合意形成しやすい方向に導いていけるように精進してまいりますのでよろしくお願いいたします。

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