
私がエレベーターコンサルタントを目指した理由(エピソード0)
私がこのエレベーター業界に身を投じてからもうすぐ30年になろうとしています。大卒入社の広告代理店からエレベーターメーカーへの転職だったので、同じ営業職とはいえ全く勝手が違っていたのでとにかく、失敗の連続でした。
当時のシンドラー社は業界でもほとんど無名の会社で、大手メーカー5社がひしめいている市場に外資系企業の新参者の立ち位置でしたので、新規開拓訪問が日常営業活動の大半でした。朝から市内の設計事務所目掛けて、会社案内、製品カタログをカバンに詰めるだけ詰めてビルからビルへ飛び込み営業の毎日でした。
やっと、エレベーター設置計画図面から新設の見積依頼を受けて見積書作成し、提出したところ停止個所数が間違っていたり、特殊仕様なのに標準仕様のままの金額だったりして、大手スーパーゼネコンの見積部署から大クレームを受け、始末書を書く事、5,6回。危うく、全国の支店にまで出入り禁止となりかけた程の騒ぎでした。
現場監督や、設計監理の設計事務所との施工図面打合せでも、ほとんど専門用語でのやりとりについていけず、内容把握,理解しないまま、工事着工、搬入時に材料製作手配ミスから全階床分の三方枠造り直しや、管轄行政への昇降機確認申請の手続きに間違った図面で申請してしまって、申請取り下げとなったり、ほとんど毎日がトラブル続きでした。
当時の私は“売れば売るほどトラブルを発生させて周りに迷惑をかけている。何のためにがんばって営業してるのか?会社の方から早くクビと言ってくれたらいいのに・・・。”と真剣に悩みぬいた時期もありました。
それでも何とか数年続けていると、エスカレーター10台もある大型プロジェクトを受注したり全国の新人営業マンに営業研修をしたりするくらいにまで成長する事ができました。
その矢先の2006年に東京のエレベーター挟まれ事故が発生し、状況が一変したのでした。新設エレベーターは受注どころか見積依頼すら月に1件もないくらいまで低迷し、新設営業は徐々に規模縮小となり最後は全国で2,3人となった2011年に東北の震災が契機となり、ついに大阪での保守営業部署への異動となりました。
新設営業を約15年やってきた人間から保守営業への異動は、実に今までの私の営業としてのプライドを傷つけるものでした。退職も視野に入りましたが、取り合えず、やってみるだけやってみようと後輩に教わりながら新設営業とは違った感覚、新鮮さの手法を感じ取ることができました。
保守営業とは、保守契約を締結している賃貸マンションオーナー、ビル所有者、管理会社、施設担当者に対して技術員が現場エレベーターの点検から、予防保全となる保全部品交換提案の見積を顧客担当者にしてほしいと、技術員が営業に見積手配依頼を出して、それを受けた営業が原価算出、見積作成し契約先へ見積提案説明するのがメインの業務です。やってみると、新設営業よりも定まった顧客が目の前にいて、部品交換の必要性の説明も真剣に聞いてくれる。何よりも顧客の部品交換完了後の安心を得た感じのフィードバックを感じる事ができるのがうれしく、新設営業では味わえないやりがいとなりました。
現在、このエレベーターに不備がある、しかも問題のあるシンドラー社の製品だ。早く直してほしい。どこのどういった部品がどう悪くなっているから交換しなければならないのか?この見積金額は妥当なのか?当初は不安を感じているのですが、写真やイラスト、表などを客観的、具体的に表現して出来るだけ細かく内訳記載し、高額であれば中長期の計画とするように分散した計画表を作成したりして検討しやすいように提案すると、いくらか安心された様子で検討され、工事完了報告には満足した表情で引渡しする事ができました。
これも新設営業では得られない喜びでした。
新設営業はプロである設計事務所やゼネコン現場担当者、見積調達部担当者が顧客対象者となるのに対して、保守営業は一般消費者、利用者に対して現場状況に応じた提案を、分かりやすく丁寧にしかもタイムリーに対応していくのが使命です。
あの、東京の事故以降、まともに新設カタログの製品説明なんて一人も聞こうとする人はいなかったので、普通に話を聞いてくれるだけで自分では感動していたのを今でも覚えています。
“実は新設営業よりも保守営業の方が向いているんじゃないか?”
そう思い始めた2012年に2回目の挟まれ事故が金沢で発生しました。
私がエレベーターコンサルタントを目指した理由(エピソード1)
2006年の1回目の事故では、新設営業だったので保守契約先からの直接的なやり取りは経験していなかったのですが、2回目の金沢での事故対応は想像以上の問い合わせ数の電話、メールに連絡網がマヒした社内統制の状態の中、国土交通省、地方自治体からの緊急点検指示を淡々とこなしていく日々が数か月続きました。
ある時、シンドラー製エレベーターの分譲マンションの管理会社から問い合わせがあり、「管理組合が今回の事故を受けて不安がっているので、一度住民説明会に来て現状の説明をしてほしい。」といった要望を受けました。緊急点検も実施済で特に問題なしの判定だったので、そういった内容の説明でよいのかと管理会社にも確認した上で、参加する事になりました。
総戸数80戸程、13階建ての当時で築10年くらいのマンションでしたが、説明会には50名程の参加者で、集会室に入りきらないくらいでした。
説明会は事前に確認した現状説明の内容ではなく、管理組合からシンドラー社に対しての要求とその回答を求めるものでした。
その要求とは、国産大手エレベーターメーカーへの総入れ替え工事の即実施であり、その費用負担はすべて、シンドラー社が持つべきといった内容です。
当時は、まだ事故原因について調査中、係争中でありそういった費用負担については承諾できないと回答したのですが、全く聞き入れる様態ではなく、「あなたでは、話にならないのでスイス本社から社長を連れて来るように、今ここで電話要請してください。」、「人命を奪っておきながら、危険な製品を製造した責任をとらないとは、どういった考えなのか?御社の製品は信用できないから他社の信頼できる製品に取り換えるのが、事故を起こした製造者としての責任ではないのか?車のリコール同様、利用者が安心できる対応措置を早急に実施するべきではないのか?」・・・等約3時間平行線を辿るやりとりが続きましたが、到底妥結する事はできませんでした。当初の管理会社の説明会参加要請の内容とはかけ離れていた事に関しても、何の発言もなくただ、見守るだけの管理会社のフロントに憤りを感じたのは、今でも鮮明に記憶に残っています。
管理会社はマンション管理業務を管理組合から請け負うので、このような業者と組合との争いごとには関与しないのは、今でこそ理解できるのですが当時は管理会社に騙されたような印象でした。
お互い譲れない主張、主義の論争には第3者を交えた話し合いが必要なのではないのか?と思い、いろいろと調べたら国家資格として、まだ誕生して間もないマンション管理士という資格の存在を知り、それから関連情報を集め、合格率8%の難関資格取得に向けて猛勉強の日々を送る事となりました。
・・・・来週、エレベーター管理の専門コンサルタントとして② に続きます・・・・。
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