
6月以降予定工事の目途がたたないエレベーター工事の現状
現在、各エレベーター会社の部品調達部門、工事関係の管理部門に材料仕入れ業者が事情説明訪問に廻っている話をよく聞くようになりました。
“以前、発注いただいた〇月以降の納品ですが、入荷の目途が立たないので一旦、注文を保留にしてください。”理由はご存じの通り、イラン情勢です。もはや、エレベーターに限ったことではありませんが、建設市場、その他の製造に関する分野全体が、この6月以降の材料調達の目途がつかいない状況となっています。
特に、油圧エレベーターは深刻です。油圧制御リニューアルでは多量の作動油が必要となってきます。大体1台の乗用エレベーターで300~400Lの油が必要となります。ドラム缶にして3、4本でしょうか。

今まで、数多くの油圧制御リニューアル工事で、油圧ユニットのタンク内の既設作動油の抜き取り作業をみてきましたが、20年以上作動油を交換していないエレベーターがほとんどで、濃い茶色のシャバシャバしたような油を吸引ポンプでドラム缶に移し替えられている状況をよく見てきましたが、新しく交換される作動油は無色透明です。20年以上経過すると、真っ黒になり、粘り気がなくなった状態で劣化します。先日もリニューアル工事の職人さん達が6,7月からの工事についてどうしていくのか?作動油交換はリニューアル工事では必須となるので、深刻な表情で思案されていました。



油の単価が上昇して工事見積に転嫁できないといった事は過去に何度もありましたが、全く油が現場に入らない状況は初めての事です。
この事は油圧式エレベーターに限った問題ではなく、実はある機種のロープ式エレベーターにも当てはまる問題で、エレベーター会社によって、新規に取り替える巻上機が、既設と同様構造のギアード型巻上機に交換するのか、ギアレス型巻上機に交換するのかによるのですが、前者のギアード型巻上機を採用している場合は、巻上機内のギアボックス内に充填しているギアオイルが作動油以上に枯渇しているらしいのです。
自動車のエンジンオイル交換とほぼ同じで、5~10年で交換が推奨されていて、周期的には非常用バッテリーと同じくらいなので定期的に予防保全で交換作業が実施される少額工事になるのですが、入荷目途が全く立たない様子です。
巻上機ギアオイル交換なら、少しくらい先延ばしでもハッキリとした症状はでないですが、エレベーターの使用頻度が高い場合は、潤滑作用低下によるモーター負荷から焼き付きとなり、大きなダメージとなるので、予防保全では重要な工事になります。
意外なところでは、エレベーターかご内の壁に貼りついているフェルト状の養生マットですが、こちらも6月以降の材料仕入れが停止しそうだと聞きました。原材料がマスコミで報道のナフサであり、7月以降については在庫が全部出荷してしまうと、出荷停止で受注分のキャンセル、見積も停止等関係先へのこれからの対応をどうするべきかを深刻な状況の様子でした。

その他、あらゆるケーブル、電線のコネクタ、端子や各種カバー、ローラー関係、各ガイドシュー、パッキン、に使われるプラスチック、樹脂系加工品や、天井照明カバー等の意匠関係アクリル製品についても大幅な値上がりにより、一律一斉に単価の値上げ要請があったり、これから皆様一般消費者への見積単価に大きな影響が出始めるのは間違いありません。




エレベーター会社における現場での技術、対応力と施工能力格差
これからの、エレベーター保守会社はただ単に定期的に保守点検をして、ある年数が経過したら部品交換の提案、メーカーへ部品発注し納品されたら、現場で取替してそれを繰り返すだけといたビジネスモデルは通用しなくなってきています。
メーカー系保守会社自身も自社の契約先の保守部品確保を当然、優先しなければなりませんし、より計画的に在庫確保した上でいかに予防保全からリニューアル工事に継投させていくかが課題とされています。
独立系保守会社は部品がそろそろ壊れかけてきたから、交換見積もりを客先に提示して、判断はあくまで客先なので注文の連絡が来るまで待っているだけでは、もはや保全管理を十分に履行しているとは言えないと思われます。故障発生してから、メーカーに発注してからだと数か月先の場合、その間のエレベーター停止といった状況となり、一気に所有者、利用者の信頼を無くすことになり、独立系保守会社全体のイメージ低下となってしまいます。
新規保守契約を受注する事ばかりではなく、既存契約先現場の保全管理を盤石にしなければ、1件の故障発生で解約となりうるので、ここの営業サービス体制についてどれだけ充足、整えられるかが大きな保守会社として差別化が図られる大きな要素となるでしょう。
先程の油圧式エレベーターの制御リニューアルにおいて、親油による作動油交換が出来ないとなると、既存タンク内にあった古い油を一旦、吸い出して、タンク内、配管、バルブ類の配管ルートをオーバーホールし、油に沈殿していたゴミ、チリを取り除いて、旧作動油にもクリーニングをかけて、親油に近い状態にして代替作業とする等、一部の工事会社では検討が進められています。
ここまでの作業内容となると、油圧式エレベーターについてかなりの工事経験、実績と知見のある技術者を抱えているエレベーター会社でないと施工できませんので、そういった見極めが一般消費者に求められることになります。
エレベーターリニューアルは今後、より深く、踏み込んだ検討作業が必要となる
従来のように、エレベーター見積業者に問い合わせて、現地調査をさせて見積書を取り寄せ、見積金額の高い、安いだけで決定できる時代ではなくなっている状況と言えます。
市場環境、業界構成、細部に渡っての製品情報、施工体制、施工実績、その工法、工程管理やそこまでの情報をメーカー系、独立系保守会社を問わず、引き出せる専門的知識により、より正確かつ、過不足無いコストパフォーマンスに優れた業者選定が可能となります。



